

科・属名
ニレ科 Ulmaceae
ニレ属 Ulmus
学名
Ulmus davidiana Planch var. japonica (Rehder) Nakai
英名
Japanese elm
和名の由来
春に花が咲くのでハルニレといい、ニレは「滑れ」の意味で、樹皮の内側がぬるぬるするから。「ニレ」は韓国語の「ヌルム」が変化してニレとの説もある。
学名の由来
Ulmus ケルト語のニレの意。種小名のdavidianaはA.ダビッドを記念して命名。Japonica 日本の。
木の特性
分布
北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に自生。
生育地は高山など冷涼な地が多い。湿潤で肥沃な土地を好む。氾濫原や河川沿いに林をつくる。
形態
落葉高木。
樹冠はほぼ円形、樹皮は暗灰褐色、縦に不規則な裂け目がある。若い枝は有毛、後に無毛となり、時にはコルク質の翼を生じる。
葉は互生、だ円形、基部は左右不等。葉縁は二重きょ歯。裏面の葉脈にそって有毛。葉にアブラムシなどのムシこぶをつくる。秋に赤色に紅葉する。
早春、葉に先立って前年枝に7-15個の小さな両生花を束生する。花被から突き出た赤い葯が目立つ。雄しべは4、雌しべ1で花柱は2裂する。
5月ごろに黄緑色の翼果を生じる。果実は両面無毛、数ミリほど、先端にくぼみがある。
特性
樹皮はタンニン、ガム質を含み粘性に富む。葉は硫酸バリウム、実は脂肪に富む。材からオルソキノンのマンソノンE,F,H,I 及び、davidianone A, B, C を含む。Davidianone A , C, マンソノン F に抗酸化作用があり、マンソノン F が最も活性が強い。
辺材、心材の境は明瞭で辺材は帯褐灰白色、心材は褐色である。材の比重は0.42~0,71で、硬さは中庸からやや重硬。

生薬
生薬名
蕪夷 神農本草経(中)はチョウセンニレ Ulmus macrocarpa Hance, コブニレ, ハルニレ Ulmus davidiana planch var. japonica(Rheder)Nak.
使用部分
果実
採集時期・方法
夏に果実を採取し、発酵加工したもの。
公定書
日本薬局方 ―
局外生規 ―
中共薬典 ―
薬性・薬味
苦辛、温
応用・利用
殺虫・消積の作用を持ち、回虫・条虫による腹痛・小児の肝癪・皮膚病を改善する薬方に配合する。
暮らしの中での用途や木にまつわる話など
アカダモ、コブニレ、ヤニレともいう。公園樹、街路樹として利用。材は建築材、器具材(お椀、盆)、楽器材(太鼓の胴)、枕木、臼・杵(きね)、べニアとしての室内内装材、新炭材、シイタケほだ木などとして利用。
樹皮は繊維をとって、布、縄に利用されていた。樹皮と根の粘着物質は和紙を漉くときの糊として利用し、樹皮を細かく砕き粉にして練ったものを楡麺(にれめん)といい、瓦や石を並べつなぐ時の接着剤に使われていた。
ハルニレはまた、方言でニレ、ネレ、ネリなどとも呼ばれている。これは樹皮をはがすとぬるぬるすることによるもので、この粘液を和紙を作るときの糊に使用していた。
ニレの呼び名はヤニヌレが縮まったことによる。 万葉集の長歌に出てくる「モルニレ」はハルニレの内皮をはがして乾かして臼でついて食料としたもので、ハルニレは貧しい人の食べ物でもあった。アイヌの人たちの間には、雷神が美しいハルニレ姫の上に落ちて生まれたのが人間の祖先のアイヌラックルであるとの伝説がある。
ニレの木は堅く、こすると着火しやすいことからニレの木から火を得ると言い伝えられている。