科・属名

ミカン科 Rutaceae

ミカン属 Citrus

学名

FCitrus aurantium L.

英名

Sour orange

和名の由来

「代々」をダイダイと読んだ。冬に熟した果実が年を越しても落果せずに2-3年は木に残っていることに基づく。

学名の由来

Citrus  古くからのレモンの木の呼び名。種小名aurantiumは橙黄色を意味する。

木の特性

分布

インド、ヒマラヤ原産。

日本へは古く中国を経て渡来。

形態

常緑小高木。

枝には側枝の第1葉が変化した刺がある。葉身は革質、長さ7㎝程度、葉柄は翼状になり葉身との間にくびれがある。葉縁は全縁、全体に油点が分布する。

初夏に芳香のある白い花が咲く。がくは杯状で小さく5裂する。花弁は5、白色。雄しべ20-40、基部は合着。雌しべは1、子房は多室。

果実はミカン状果、ほぼ球形、子房の内壁から伸びた液質の毛が中を満たす。外果皮は厚く、多数の油細胞が分布、内果皮は海綿状、中に数個の種子を含む。果実は冬に橙黄色に熟して、2-3年は枝に残る。

種子はだ円形、中に子葉を持つ胚があり、胚乳はない。

特性

果皮はリモネン、ベルガプテン、βーカリオフィレン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ナリンギンを含む。

生薬

生薬名

橘柚・枳実 神農本草経(上・中)はCitrus aurantiumで同じ

使用部分

果皮、種子、幼果、中果皮の維管束群、葉

採集時期・方法

皮を日干する。

色・味・香り

枳実 外面は濃緑褐色~褐色。内面は表皮に接する部分は黄褐色、その他は淡灰褐色。特異な匂いがあり、味は苦い。

陳皮 外面は黄赤色~暗黄褐色。内面は白色~淡灰黄褐色。 特異な芳香があり、味は苦くて、わずかに刺激性がある。

撰品

枳実芳香性で果皮が厚く、苦味の強いものが良品 陳皮 良く乾いた橙黄色のもので、折ると芳香を放つものが良品。

主な薬用成分

陳皮ー精油(limonene),フラボン配糖体(hesperidin naringin),(synephrine) ペクチン, 有機酸

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―橘皮 タチバナCitrus tachibana Tanaka

         又はその他近縁植物の成熟した果皮

  中共薬典―

処方例 ―枳実として、平胃散(和剤局方)、

     陳皮として、半夏白朮天麻湯(脾胃論)

漢方例

清上防風湯(万病回春)、治頭瘡一方(本朝経験方)

薬性・薬味

橘柚 辛 温 枳実  苦 寒 陳皮  辛苦温

応用・利用

健胃・鎮咳・去痰・理気作用があり、食欲不振・嘔吐・咳嗽・去痰などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果皮を薬用にする。果実を正月の飾り用に用いる。花、果皮から精油を採取。ダイダイ酢、ダイダイ湯を作って飲料とする。 果実は苦みと酸味が強く生食には適さない。

漢薬として果皮、未熟果実などを用いる。

果汁は酸味と風味からポン酢の材料とされる。

植物全体から精油を採取する。

正月飾りに鏡餅の上にダイダイをのせるのは語源の「代々」から「代々栄える」という縁起を担いだもので、ミカンなど他の柑橘類で代用するのでは意味がない。

別名「回青橙」(かいせいとう)と呼ばれる。これは最初に緑色の果実が成熟すると橙色になるが、果実は落果しないで翌年まで残る。前年の果実は翌年の夏には再び緑色になり、また冬には橙色に変わる。この為「回青橙」(日本語の古語では緑は青という)と呼ばれた。この様に同じ木に新旧の果実が同時になる事で「代々」続くことを佳しとした。

橙が「ダイダイ」と呼ばれるようになったのは鎌倉・室町時代以降で、それ以前は「阿部橘」(アベタチバナ)と呼ばれた。「阿部」は現在の奈良県桜井市阿部で、「阿部で採れる橘」の意らしい。