科・属名

ミカン科 Rutaceae

ミカン属 Citrus

学名

Citrus natsudaidai Hayata.

英名

Natsudaidai orange, Japanese summer orage

和名の由来

本来は夏代々(なつだいだい)と呼ばれていたが、明治になって上方で流通するようになってから「夏ミカン」と呼ばれるようになった。

関西では中風(脳血管障害により身体が付随になる病)の事を「ヨヨ」と言い「代々」が「ヨヨ」とも読めることから、「夏代々」を食べると中風になるという俗説が流布した。この為に夏ミカンの売り上げが落ちたことから大阪商人がこの名を改めるように奨めたという。別名夏柑,甘夏。

学名の由来

Citrus レモンの木の古名 Natsudaidai 和名のまま。

木の特性

分布

ボンタンの自然雑種で南方から漂着した果実の種子を山口県青海島で栽培した栽培品種。

形態

常緑小高木。

枝は大きく広げる。葉は厚く、薬10㎝の長卵形、葉柄には翼がある。葉縁には細かいきょ歯があり、腺点が多い。

花は5月ころ、枝先の葉腋に白色の花をつける。花弁5、やや厚みがある。がく片5.雄しべは多数、雌しべは1。

果実は直径15㎝ほど、扁球形で果皮は厚い。

特性

果実は精油として、d-リモネン、αー、βーピネン、αーテルピネン、βーコパエン、リナロール、及び不ラバン配糖体のナリンギン、ネオヘスペリジンを含む。果皮は(4S,6S)-6-O-β-D-glucopyranosyl-p-menth-1-en-3-oneを含む。

果皮油から得られたクマリン誘導体aurapten, umbelliferonに抗ガン作用が見出されている。

生薬

生薬名

橘柚 枳実 神農本草経(上・中)はCitrus natsudaidai Hayataで同じ

使用部分

果皮、種子、幼果、中果皮の維管束群、葉

採集時期・方法

皮を日干する。

色・味・香り

枳実 外面は濃緑褐色~褐色。内面は表皮に接する部分は黄褐色、その他は淡灰褐色。特異な匂いがあり、味は苦い。

陳皮 外面は黄赤色~暗黄褐色。内面は白色~淡灰黄褐色。 特異な芳香があり、味は苦くて、わずかに刺激性がある。ダイダイと同じ

撰品

枳実芳香性で果皮が厚く、苦味の強いものが良品 陳皮 良く乾いた橙黄色のもので、折ると芳香を放つものが良品。ダイダイと同じ

主な薬用成分

陳皮ー精油(limonene),フラボン配糖体(hesperidin naringin),(synephrine) ペクチン, 有機酸

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規 ―橘皮 タチバナCitrus tachibana Tanaka

       又はその他近縁植物の成熟した果皮

処方例:  ―枳実として、平胃散(和剤局方)、

       陳皮として、半夏白朮天麻湯(脾胃論)

薬性・薬味

橘柚 辛 温 枳実 苦 寒

応用・利用

健胃・鎮咳・去痰・理気作用があり、食欲不振・嘔吐・咳嗽・去痰などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果実を食用、果皮を薬用として利用。果皮の圧搾によって得られるオレンジ油は、飲料及び食品香料として利用される。

漢薬として果皮を用いる。

江戸時代に中国大陸南部から海流に乗って山口県長門市の青海島に漂着した柑橘類(文旦系)の果実の種子を蒔いて育てたものがはじまりと言われる。その後萩に移植され、ユズの代用として利用されていた。幕末のころに、たまたま夏に収穫したら美味であったことから「ナツダイダイ」と呼ばれ、夏の食用柑橘となった。

明治時代に入って、萩の旧武士は生活が困窮し、これを経済的に助けるためにナツミカンの栽培を奨励した。ひと頃は町一面にナツミカンの花の香りが広がっていた程萩での栽培は盛んであった。