科・属名

ウルシ科 Anacarciaceae

ウルシ属 Toxicodendron

学名

Toxicodendron vernicifluum Stokes

英名

Lacquer tree、Varnish tree, Chinese lacquar tree

和名の由来

「漆」の漢字の偏(へん)は木汁が1滴ずつしたたる様子を示し、旁(つくり)の(さんずい)の水を添えたもの。ウルシをシツとするのは「津(したたる汁)」の語尾が転じたもの。

学名の由来

Toxicodendron toxicon有毒の+dendorn樹木。Vernicifluum ワニスを生じるもの

木の特性

分布

アジア原産。

中国、朝鮮半島、日本で古くから栽培。

日本には中国を経て渡来とされているが、日本の縄文時代の遺跡から漆器が出土していることから日本に自生していたとも考えられる。

1万2000年前の木片が1984年福井県若狭町の鳥浜貝塚で出土、日本最古のウルシとされる。

形態

落葉高木. 雌雄異株、時に雑居性。

樹皮は灰白色。

葉は奇数羽状複葉、長さ40センチ,葉軸は赤紫色。小葉は3-9対、だ円形、全縁。秋には紅葉する。

花は初夏、葉の展開直後に葉腋に黄緑色で、長さ30㎝ほどの円錐花序を出す。雌花は花弁5,不稔の雄しべ5,雌しべ1の柱頭は3裂する。雄花は雄しべ5,雌しべは退化。

果実は黄褐色、球形の核果、秋に成熟して黄褐色。

特性

樹液はウルシオール、ハイドロウルシオール、マンニトール、ゴム質を含む。

ウルシオールは大量に投与すると脳中枢神経系に害を及ぼす。辺材は灰白色、心材は黄色で光沢がある。

材の気乾比重は0.45~0.55程度である。

生薬

生薬名

乾漆 神農本草経(上)はウルシToxicodendron vernicifluum Stokesで同じ

使用部分

乾燥した樹脂

採集時期・方法

打ち砕いて、火にかけ、煙のなくなるまで炒る。

撰品

深黒色 焼いて漆の気のあるもの。

主な薬用成分

トリテルペノイド(betulinic acid)、リグナン(phillygenin)、エニルエタノイド配糖体(hydroyacetoside)、フラボノイド(rutin quercitrin)

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規 ―

 中共薬典 ―漆樹科植物 漆樹 Toricodendron vernicifolium (Stokey)

       F.A.barkl的樹脂経加工后乾燥

漢方例

大黄シャ虫丸(金)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

駆お血・駆虫の作用があり、無月経・腹部腫瘤・寄生虫症などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

樹皮に横傷をつけて樹液(生漆)を採取。樹液は漆器を塗るのに使用される。

樹液はウルシオールによってかぶれやすい。敏感な人はこの木のそばを通ってもかぶれることがある。山火事などでウルシなどが燃えた煙を吸うと気管支や肺がかぶれて呼吸困難に至ることがある。

樹液は空気中に出ると乳白色から褐色に変化する。漆は水、熱、アルカリに強く、乾くと固まる。

材は耐湿性があり、黄色で光沢があるので、寄木、小細工物、箱類、洋傘の柄などにされるほか、漁網の浮木、下駄などにされる。

果実は乾燥後、木蝋を搾取する。

新芽は味噌汁や天ぷらにして食用とするが、食べると舌に違和感が出ることがある。本来は漆職人が漆に対して免疫をつくる為に食べ始めたものである。

薬用に用いる。

ウルシは古く朝鮮半島を経て渡来し、7世紀にはすでに栽培されていた。クワ、コウゾ、茶、とともに江戸時代には産業の4木の一つとして各藩で盛んに栽培されていた。明治の初めには700トンの生産があったが、現在はほとんど栽培されておらず、ほとんどを中国、台湾、ベトナムなどから輸入している。