科・属名

ブドウ科 Vitaceae

ブドウ属 Vitis

学名

Vitis coignetiae Pulliat ex Planch.

英名

Crimson glory vine

和名の由来

山に自生する葡萄。葡萄は西暦元年のころに中央アジアに繁栄した「大宛国」(だいえんこく)の呼び名「budaw」或いはギリシャ語の「Botrus」に由来、中国を経由して現在の葡萄となった。

学名の由来

Vitis ギリシャ語のvieo 結ぶの意。Coignetiace  coignitus 著名なるの意から。

木の特性

分布

北海道、樺太、本州中部以北、四国の高山に分布。

形態

つる性落葉低木。雌雄異株。

古木の樹皮は縦に裂け、薄く剥がれる。髄は褐色。若い枝や葉には褐色毛がある。つるは葉と対生する巻きひげで他の植物などに絡みついて高く登る。巻きひげは全ての葉と対生することは無い。

葉は30㎝ほどで互生、葉身基部が心形となり、全体は5角形。葉の裏面には褐色の綿毛があり、秋に紅葉する。

花は初夏、葉と対生して円錐花序に、黄緑色の小さい花を多数付ける。がくは輪形、花弁は5.花弁が開花するとき花弁の頂端部が合着したまま、帽子を脱ぐようにして落ちる雌花は不稔の雄しべと稔性のある雌しべを備え、雄花は不稔の雌しべと稔性のある雄しべを持ち、花粉の送粉者としての役割のみを果たす。果実は雌株にのみ稔る。

おしべ5,雌しべ1.野生種は栽培品種とは異なり、1株では結実しない。

果実は液果、球形、秋に黒紫色に熟す。

特性

果汁は酒石酸、ブドウ糖、果糖、ビタミンB1,Cを含む。

根皮をすって粉末にしたものをできものに塗布すると効果がある。

生薬

生薬名

葡萄 神農本草経(上)は ヤマブドウ Vitis viniferi

使用部分

果実

採集時期・方法

果実 成熟時に採取し、陰干しする。 根・つる 10~11月に採取し、日干しか其のまま使用。

主な薬用成分

タンニン、糖類(ブドウ糖・果糖、その他少量のショ糖・キシロース、有機酸(酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸)、色素(各種アントチアン類)、その他(各種ビタミン、カルシウム、など)

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

甘、平

応用・利用

気血の衰弱、肺虚の咳嗽、排尿痛、浮腫、動悸、ねあせ、民間療法で根・つる 9~15gを半身不随に使用する。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

古名をエビスカズラと言い、ヤマブドウの果実の赤紫色を葡萄色(えびいろ)と言い、日本の伝統的な色彩として、平安時代の貴族に好まれ、王朝文学にもよく登場する。

皇室では内親王が5歳になると葡萄色の袴を着る「着袴の儀」が行われる。これは民間の七五三に当たる行事である。この色のやや茶色がかったものが海老茶色である。

ブドウトックリタマバエが葉に虫頴を作る。

樹皮はなめして籠などを作る。北海道のアイヌは草履を編んで履いていた。

果実は生食、ジャム、ブドウ酒などにするほか、ブドウ酒の着色用に使われてきた。

味は甘酢っぱい。本種の果汁には鉄分が多く含まれ、優れた健康飲料である。

果実、葉、茎は染料に用いる。

若葉、若芽は初夏に採取して食用。