科・属名
モクセイ科 Oleaceae
トネリコ属 Fraxinus
学名
Fraxinus sieboldiana Blume
英名
Japanese Flowering Ash
和名の由来
マルバとは葉縁がなめらかできょ歯がないことによる。アオダモの意は、枝を切って水に入れると紫外線で藍色の蛍光を発することによる。
老木の葉が細長くなることから別名ホソバアオダモ。
学名の由来
Fraxinus は英語名ashのラテン語、槍の意
Sieboldiana 19世紀に来日したドイツ医師、博物学者の名。
木の特性
分布
朝鮮半島、日本(北海道、本州、四国、九州)低山の日当たりの良い尾根、丘陵地などを好む。
形態
落葉高木。雌雄異株、雌株には両生花もつける。
若い枝は緑色、翌年に灰白色になり、平滑、表面に地衣類が付着する。老木では樹皮は縦に割ける。
葉は対生、葉柄は長く、3-5小葉の奇数羽状複葉、葉身は5-10㎝。幼木の小葉は丸いが成木では細長くなる。葉の裏面の主脈沿いに白毛が生じる。葉縁は全縁で波打つ。
同属のアオダモはきょ歯がある点で区別出来る。
花は春に咲き、当年枝に円錐花序が対生し、白色、花弁4は線形、6㍉程度。雄しべは2で雄株と雌株にあり両生花もある。雌しべ1は雌花のみにあり,柱頭が赤みを帯びる。
果実は2㎝ほどの長い翼果、基部に種子を1個つける。
特性
マルバアオダモは本州、四国、九州に分布する落葉高木だが、同属のシマトネリコ(F.griffithii C.B.Clarke)は、亜熱帯に分布し、耐寒性があるので本州の植栽でも生育する常緑高木。同じく同属のシナトネリコ(F.chinensis Roxb.)は主に中国に分布する落葉高木で、樹皮、葉とも止血、解毒、調経などの作用があり、できもの、月経不順に利用される。
トネリコ属樹木からはセコイリドイド類、フェニルプロパノイド類、フラボノイド類、クマリン類、フェノール類、タンニン類などの配糖体が単離され、消炎効果、抗菌性、抗酸化などが検討されている。
アオダモ類の材は心材の割合が少なく、辺材と心材の境界もあまり明瞭でないものが多い。辺材は黄白色、心材は淡黄褐色であり、年輪ははっきりしている。木理は通直、肌目はやや粗である。
生薬
生薬名
秦皮:神農本草経(中)はシナトネリコ Furaxinus chinensis (Thunberg.)Vahl
使用部分
樹皮・葉
採集時期・方法
春~秋に樹皮を剥ぎ、日に乾燥。
色・味・香り
味は苦い
撰品
外皮は薄く、光滑があり、苦味が濃い者を良品とする
主な薬用成分
fraxetin fraxin
公定書
日本薬局方 ―
局外生規 ―
中共薬典 苦櫪白蝋樹 Fraxinus Rhynchophylla Hance、
白蝋樹Fraxinus chinense Roxb.
光葉白蝋樹 Fraxinus chinense Roxb. var.acuminata Lingelsh
宿柱白蝋樹 Fraxinus stylosa Lingelsh 干燥枝皮 又干皮
漢方例
白頭翁湯(傷)
薬性・薬味
苦、微寒
応用・利用
清熱・燥湿・止瀉・明目の作用があり、無月経・下痢などに内服。目の充血・打撲・外傷の出血、できものに外用。
暮らしの中での用途や木にまつわる話など
同属のアオダモ(Fraxinus lanuginosa Koidzumi var.serrata Hara)の材は軽くて粘性が強いので野球のバッド、テニス・バドミントンのラケット枠、スキー材などの運動具材として用いられる。アオダモ、マルバアオは器具材、家具材としても使われるが、より小型の利用、例えば、カンジキや道具の柄などに使われる。
トネリコ属の樹皮は蛍光物質を含み水に浸けると溶け出す。この水に紫外線が当たると青く光るが、樹皮を浸けすぎると水溶性の他の物質も水に溶け出るので確認が難しい。
樹皮の抽出液にはエスクレチン,その配糖体のエスクリン、フラキセチンとその配糖体フラキシンを含みこれらが蛍光を発する原因物質である。
アオダモ、マルバアオダモは、この木の皮を水につけると水が青くなるからアオダモ、と呼ばれるとの説がある。関東・中部地方では葉の形がフジに似ているのでフジキとも呼ばれる。