科・属名
マツ科
マツ属
学名
Pinus thunbergii Sieb.eEt Et Zucc.
英名
Japanese black pine, Japanese pine, Black pine
和名の由来
樹皮が黒いマツ。マツについては諸説がある。神を「待つ」、神を祀る、または常緑であるので、「真常木」(まとのき)、久しきを「待つ」や「保つ」などから由来。
学名の由来
Pinus タール状のものを指す。Thunbergii スエーデンの植物学者の名に因む。
木の特性
分布
日本(本州、四国、九州)、朝鮮半島に自生。
主に海岸に生育するが、耐寒性もある。
北海道にも植栽される。
形態
常緑高木。雌雄同株。
高さ40mに達するものもある。
樹皮は灰黒色、亀甲状に割れ目が入り剥がれる。枝は長枝と短枝があり、葉は短枝に2枚、側生、アカマツよりも硬く、長枝も太い。 4-5月、若い短枝の基部に多数の雄花、その枝の先に2-4個の雌花をつける。雄花はだ円形、20㎜ほど、黄色。各種鱗上に2個の薬室をつける。縦に裂開して気のうを持つ花粉を出す。風媒花。
雌花は3㎜、球形、紅紫色、種鱗には2個の胚珠があり、風に運ばれた花粉で受粉する。
雌花は1年半後に種子を成熟させ、種鱗は木化し、松かさを作る。包鱗は膜状に種子を包み翼を形成する。
種子は風散布。
特性
葉、材はテルペン類を多く含み、特に葉にはα―ピネンなどのモノテルペン類、材にはアビエチン酸などのジテルペン類を多く含む。
マツの樹幹にキズをつけると滲出してくるものが生松脂(なままつやに)で、これには揮発性のテレビンと不揮発性固体のロジンが含まれている。
テレビンはモノテルペンを主成分とし、ロジンはジテルペンを主成分とする。
辺材は淡黄白色、心材は淡褐色である。
材の気乾比重は0.5程度である。
生薬
生薬名
松脂 神農本草経(上)はPinus densiflora Sieb.etZUCC.で同じ
使用部分
松脂(マツヤニ)
採集時期・方法
幹に傷をつけ浸出した生松脂を集めて乾燥。粉にして用いる。
色・味・香り
半透明な琥珀色。
撰品
黄色か淡黄褐色の大きい塊が良い。暗色を帯びたものは不可。
主な薬用成分
精油
公定書
日本薬局方 ―
局外生規 ―
中共薬典 ―
薬性・薬味
苦、温
応用・利用
痰 肩凝り 筋肉痛 打ち身
日本の民間療法では葉に滋養強壮作用があり、低血圧症 不眠症 冷え症 食欲不振 動脈硬化の予防に使用する
暮らしの中での用途や木にまつわる話など
庭園樹、公園樹、海岸砂防林として植栽される。塩害に強いため特に、海岸近くに防風・防潮林として植栽され、海岸の景観を形づくっている。
宝飾品の琥珀は、マツヤニが数百万年を地中の圧力のもとで経過してできたものである。マツヤニには利尿作用があり、薬用にされる。
マツは松竹梅として料理などの格付けに使われたりする。本来は「歳寒三友」として中国の文人画の画題の1つであった。中国での松竹梅とは寒中でも色あせず、花開き、緑を保つ「清廉潔白」という文人の理想を表したものであった。日本では松が一番、次に竹、梅と続くが本来、このようなランク付けの意味は持たない。
日本の正月には門松は欠かせないが、この風習は平安時代から始まり江戸時代に盛んになったものである。これは古くから木の梢には神が宿ると考えられており、松などの常磐木は神聖な木とされ歳神さまを正月に迎える時の依代(神を導き入れるためのもの)であった、またその神が悪霊や邪気を家に入るのを防ぐことを願ったものでもある。