科・属名

イチイ科 Taxaceae

カヤ属 Torreya

学名

Torreya nucifera (L.) Sieb. et Zucc.

英名

Kaya. Japanese nutmeg-yew

和名の由来

材をいぶして蚊の防虫に使われたことからカヤの語源は「蚊遣り」に由来する。

学名の由来

Torreyaは米国19世紀の植物学者Jphn Torrey に因む。Nucifera 堅果を持ったの意。

木の特性

分布

日本の九州、四国、本州(群馬県、福島県が北限)朝鮮半島に分布。

暖帯林に生育。

形態

常緑針葉樹。雌雄異株。

幹は直立し、高木となると開花結実する。成長は遅いが寿命は長い。

樹皮は灰褐色、老木では縦に割ける。若枝は緑色。枝は対生し、側枝は三叉状に伸びる。

葉は水平に2列に対生、3㎝ほどの線形、先は鋭く尖る。葉の表面は緑色、革質、硬い(イヌガヤは柔らかい葉)。

春に開花。雄花は1㎝ほどで黄色、だ円形、前年枝の根本につく。雌花は当年枝の基部の葉の付け根に2個付くが結実するのは多くの場合その内の1個。

果実はだ円形、裸子植物には果皮はないので種子を被うのは緑色で繊維質の仮樹皮。翌年の秋に熟すと紫褐色。堅果。

種子の外種皮は硬く、淡褐色、だ円形,内種皮は膜状で剥がれにくい。

特性

果実から肉質の外種皮を除いた種子が薬用とされるが、これにはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸が含まれる。葉はリモネン、カンフェン、ヌシフェラール、ヌシフェロールなどのテルペン類を含む。

種子を炒って食べると夜尿症に効果があると言われている。

辺材は黄白色、心材は褐色を帯びた黄色。

木理はおおむね通直で、肌目は精で、油気が感じられ、磨くと光沢が出る。

材には香りがあり、奈良、平安時代の仏像にはヒノキ、クスノキと並んでカヤを材料としたものが少なくない。

生薬

生薬名

彼子、カヤTorrey nucifera (L.)Sieb.etZUCC. 神農本草経(下)はカヤTorreya grandis Fort.である。

使用部分

種子

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

甘草麦大棗湯(金)、苓桂甘棗湯(傷)

薬性・薬味

甘、温

応用・利用

消腫・潰膿・止痛の作用があり、膿のあるおでき・心腹痛・尿血・インポテンツ・遺精に用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

材は淡黄色で光沢があり、緻密、独特の芳香がある。心材は褐黄色、辺材は黄白色、しかし心材、辺材の区別は不鮮明。

耐朽性、保存性が高く、加工しやすく、建材、器具材、風呂桶、船材に利用される。

碁盤、将棋盤は最高級品、駒はツゲ、盤はカヤと言われるほど。碁盤用のカヤ材では宮崎産が最もよいとされており、製材後の材を10年近くかけて自然乾燥させる。彫刻などの工芸品にも加工される。

種子は薬用。種子油は食用、頭髪用、燈火用に用いられていた。

各地に樹齢数百年を越える巨大な古木が保存されている(三重県伊賀市島ヶ原中村、福島県桑折町、宮城県柴田郡柴田町、愛知県新城市黄柳野郷ヶ平、鹿児島県霧島市福山町など)。 カヤの果実は相撲の土俵の鎮め物としても使われている。米、塩、スルメ、昆布、栗と共に土俵中央の孔に埋められている。