科・属名

ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae

キリ属 Paulowni

学名

Paulownia tomentosa Steud.

英名

Paulownia , kiri, karri tree, princess tree、Empress tree, Princes tree, Foxglove tree

和名の由来

キリは切ると直ぐ芽を出して成長することに由来。

学名の由来

Paulowniaはシーボルトがオランダ王ウィレムⅡの王妃で、ロシア皇帝バーヴェル1の皇女でもあるアンナ・パヴロヴァナに献名。(英名の由来でもある) Tomentosa 毛が密生している。

木の特性

分布

中国、ラオス、ベトナムに自生。

東アジア特に日本と朝鮮半島で栽培される。

日本では北海道南部以南で植栽。

形態

落葉高木。

樹皮は灰褐色、皮目が多い。

若い枝には粘りけのある軟毛が密生する。

葉は大きな広卵形、対生する。若木の葉は5浅裂し、大きく60㎝を越えることもあるが、成木では全縁、全体の形も小さくなる。葉の裏面には星状毛の腺毛がある。

春に30 ㎝程度の円錐花序に合弁の淡紫色の花を付ける。蕾みは前年秋には生じる。がく筒は褐色毛に被われる。雄しべは4、雌しべは1。

果実は朔果、2室に分かれ、無数の翼のある種子を生じる。翼果は初冬に半裂開し、翌春に完全に開く。

種子には膜質の翼があり、遠くまで運ばれ易く、発芽率も高く、樹の成長も早いので野生化したものが各所に見られる。

特性

樹皮にシリンギン(フェノール配糖体)、カタルポール(イリドイド配糖体)、葉にウルソール酸、マテウシノール、材にバウロウニン、イソバウロニン、d-アサリニン、d-セサミンが含まれる。

果実は気管支炎、材は足の腫れに、材は足の腫れに、根及び根の皮は腫物、痔疾に、種子を止血に、あるいは除虫剤として使用する。葉の煎汁をできもの、外傷の患部に塗布する。

材は軽く、比重0.28~0.3程度である。切削などの加工は極めて容易。

生薬

生薬名

桐葉 神農本草経(下)はPaulownia tomentosa (Thunb.)Steud.で同じ

使用部分

葉、根、果実

採集時期・方法

6月~8月に採取し、日干し乾燥。

色・味・香り

果実を枸杞子という。果皮は赤色~暗赤色。特異なにおいがあり、味は甘く、後わずかに苦い。根を地骨皮という。外面灰黄色あるいは黄褐色。内面黄白色。いは弱く、味は少し甘い。

撰品

枸杞子 完熟していて、黄色く赤味がかったもので、黒くないもの。

主な薬用成分

木部 pawlownin、果実 elaeastearic acid フラボノイド アルカロイド

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

利尿・おでき・切り傷の止血

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

「大和本草」の中で貝原益軒はキリについて、「切れば早く長ず,故にキリという」と述べている。昔は娘が生まれるとキリを植えて、嫁入りのときのタンスや長持ちを作るのに間に合うと言われ植えられたほどに成長が早い。

キリの中国名は毛泡桐、桐,白桐、日本泡桐である。日本名ではヒトハグサ、ハナギリの名前でも呼ばれている。古来、岩手県の南部桐、福島県の会津桐などがよく知られており、ほかには新潟、茨城、秋田県の桐がよく知られている。近年は国内生産量が、需要に追い付かず、タイワンギリ(Paulownia taiwaniana Hu et Chang)や南米産が輸入されている。

タンスなどの家具に用いられているのはこれらの輸入材によるものが多い。

キリは日本の樹種の中で最も軽く、加工しやすく、割れやクルイが少ない、吸湿性が低いなどの特長を持ち、タンス、家具、調度品、建具、天井板、腰板、欄間、仏壇、彫刻、琴、下駄、羽子板などの玩具類、寄木細工、漁網の浮きなどに用いられる。

また、キリ炭は軟らかく粒子が細かいので、漆塗容器の研磨材、まゆ墨として用いられるほか、火薬用、絵画用,に用いる。葉は除虫用、樹皮を染料として用いる。キリ材は火事などの火に強いと言われている。

これは熱伝導が小さいので、表面が焼け、炭化するとその後は熱を内部に通しにくくなるためである。キリが下駄として優れているのは軽いだけでなく、土に接した時に土粒が材の表面によく食い込んで、その後の磨滅を少なくするからであるとの説がある。

キリの花と葉を図案化した五七の桐の紋章は政府の紋章として使用されている。

キリは古い時代に文学上にも現れてくるように、人々に近い存在であった。源氏物語には「桐壷」の巻があり、枕草子では「桐の花、紫に咲きたるはなほおかしきを~~」と書かれている。

直立した形でいくつも紫の花をつけるキリの花には人を引き付ける魅力がある。

木材としても成長が早く、建材として利用される。日本では、良質の木材として琴、箱、家具特に箪笥の材料とされ、高級家具の代名詞である。

キリは発火し難いため、金庫の内側にも使われる。

伝統的に神聖な木とみなされ、家紋、紋章に用いられた。中国では桐は鳳凰の止まる樹として神聖なものとされ、日本でも天皇家では菊花紋に次いで桐紋が高貴な紋章とされた。

中世以降は将軍家にも許され、五七桐は政権担当者の紋章とされた。足利氏、織田氏、豊臣氏など有名武将がキリの花の紋章を使っている。

近代になると五七桐は日本政府の紋章として勲章に使われ、国章としてパスポート、ビザの表紙に使われ、内閣総理大臣の紋章として官邸の備品に取り付けられたりしている。

桐紋の基本図案は3本の直立する花序とその下に3枚の葉から成る。その中で五七桐は花序の花数が5-7-5で、五三桐は花数が3-5-3となる。五三桐は庶民に普及した紋章であった。このほかにもさまざまな桐紋の意匠がある。

一方、北米南部では本来は花が好まれて庭園樹、街路樹などとして導入されたが、生育適応性や、発芽率が高いなどのため近年では本種は侵略的外来種とみなされている。